ひいらぎかざろう
ひいらぎ飾ろう♪といって
柊の小枝と焼いた鰯の頭で魔除けを飾るのはこちらのアカウントです。
こんにちは。
男性と食事をして、旅行のお誘いがきた。
気が早いがな。
まだ会って二回目だ。
いや、早くていいんだっけ。
とてもいい人だと思うけど、
惚れているかと言われればまだそこまでではない。
でも、お互い好意を小出しにして、
それとないやりとりの中に色気をちりばめ、
期待し期待され、焦らし焦らされて、
その過程を、手の込んだ「前戯」と呼んでいる余裕はない。
タイミングを逃したら、男でも女でも友達でもなくなる。
何度もあったじゃないか。
石橋をたたきすぎて、石橋すら壊したことが。
既婚者の友達は、獲物は「とにかくヤれ」という。
めちゃくちゃイケメンのヒモを育ててるマダムも
「こちらからでもなんでも、けしかけてみればいいのよ。
寝なくちゃわからないわ。 寝てもダメならそれまでよ。」
と懇切丁寧に教えてくれた。
なんてみんなフレンドリーにセックスしてるんだ。
その真実を耳にするたび、気絶しそうになる。
肌が合うか合わないか
まずそこを確認しなくてはならない。
付き合いだしてから、または気持ちが完全にのめりこんで、
つま先立ちのクラウチングスタートを切った瞬間の
カラダの相性が最悪で転倒するパターンは
その試合だけでなく、今後の選手生命にも大きな打撃をあたえるだろう。
私たちが生きてるのは、どこよりも厳しい東京砂漠。
少女マンガでも、おとぎ話の中でもないのだ。
結婚願望のある面倒なアラサ―を受けてたつなんて、
なかなか心意気がある人じゃないか。
私は、ルックスが正妻顔ではないからか、サバけてるように見えるらしく
後腐れない関係が成立するように見えるらしい。
(実際はそんなことはないのだが。)
記念受験のようにカラダを求めてくる既婚者は後をたたない。
そんな暇ないので、記念受験を相手にすることもない。
今更その度に傷つくこともないが、時々、会心の一撃がくることがある。
いくらなんでも、「遊び」だと言われれば傷つくんだぜ。
ただ、そこに泣いたり怒ったりすることもなく
陰で血の涙を流しながら、のらりくらりとかわしてきた。
今まで「女の子の弱さ」をひた隠しにしてきたのだ。
私の一番奥の柔らかく湿ったところを
伸びた汚い爪で力任せにかき回されるのが怖くて。
本当のわたしを出すには危険すぎる。
本当の私を見せるには早すぎる。
この人はだいじょうぶ?まだ、だめ?
それで傷ついても、誰も守ってくれないから。
試行錯誤をして形成された「自分を守るスキル」を身に着けた。
さびしくて気が狂いそうな夜もある。
普段、それほど神様など信じてないのに「私を一人にしないでください」とお祈りすることもある。
不安定な自分を丸出しにしてつれづれなるままにtwitterやfbのタイムラインを埋め尽くして
誰かに心配してもらいたいときもある。
そして恥ずかしがるでもなく翌昼に
ケロッと「限定ランチ、まだあった。おいしい(*^^*)」とか書いて、帳消しにしたい。
仲良くなりすぎた男友達は無責任にいう「そういうとこ好きだよ、そのままのお前出せよ。」
気付けば、いままで私を守ったお手製の鎧は、
今の体力が衰えたカラダには不釣り合いで、
その時代遅れのデザインも、重たいばかりで劣化した素材も
もの悲しい負の遺産となっていた。
しかし、この重すぎる十字架は、そう簡単に脱ぐことができなかった。
もし、呪いが解けたとしても、一糸まとわぬ無防備な私をだしたら、
それはそれで「努力がたりてない。」と言われ
「男心を知らな過ぎる。それで男が捕まるわけがない」と言われることは目に見えているが。
そうこう思案しているうちに、
流石に「すぐに旅行」というわけではなく、
まず来週は、クリスマスディナー(イブではない)にご招待され、
例の「デザートは私」のパターンなのかどうかを考えている。
そして、イブはイブで女同士で鍋でも囲んで、
その時の話のネタにできると思っている私がいる。
竹内まりあが歌うように、クリスマスは今年もやってきた。
すべてはなるようになるだけの話なのだ
迷わず行けよ、行けばわかるさ
ぼうけんのしょ を はじめますか?
“あの日から何度目の夏が来ただろう? 出会ったり別れたり繰り返し
美しい思い出も大切だけど 人生はこれからを夢見ることさ”
見てくれはまあ年相応に、タモさんもびっくりなぐらい髪切って、
選ぶモノも変わった。
誰もが知ってた仲だったあの人と別れた後、
しばらくは思い出が詰まりすぎて遠回りしてたあの道だって
もうひとりで歩けるようになった。
思考もそれなりに幅広くなった(ということにしよう)。
味覚もちょっと変わった。
その他もろもろは長くなるから割愛。
健全なる精神は健全なる身体に宿る
先日、ひさしぶりに通いなれた皮膚科にいった、
診察は丁寧で人気があり、それまで何時間も待つが患者は後を絶たない。
受付をすませ、なんとなく上を見ると
「薄毛治療」の文字
そう、
実は、四月、私は自分にハゲがあることを気付いた。
というか見つけられた。
「小さいから円形脱毛症だと思う。
でももう少し生えてるから四か月前くらい?
その時くらいに、なんかあったの?」
知識のある第一発見者はにこやかな笑顔で訪ねてきた。
失恋だった。
夏のピークからこじらせた失恋は、
なんやかんやと年末まで私を苦しめたのだった。
発見された時は、せめてもの救いで新しい恋がはじまっていた。
(数か月後に、ひどい形で終わるが、その話はまた別の機会に)
ただその時は、仕事のほうは、
ガムもびっくりのブラックブラックっぷりで
その後もしばらく、息も絶え絶えだった。
今思うと、よく生きた伸びたと思う。
フラッシュバックする記憶。
頭皮にしびれのようなチリチリするような刺激を感じた。
できるだけ、薄毛治療ポスターを見ないようにして
待合の週刊文春バックナンバーに集中して、名前が呼ばれるのだけをまった。
女医さんは相変わらず元気で、いつかより白髪は増えたが、
肌はアンパンマンのように照り艶がよかった。
うれしくて「おひさしぶりです」と挨拶をした。
そして、おもむろにトレンカを膝までたくし上げ
湿疹がひどくなりアトピー用語でいう滲出液が出て汚くなった患部を見せた。
あまりの勢いでかさぶたが剥がれ鮮血が流れ出た。
「あらやだ、出血してるじゃない。
こんな足で、もうすぐクリスマスなのにどうするのよ!」
診察室に、演技かかった女医の声が響いた。
私が滝川クリステルならやっただろう
「ク・リ・ス・マ・ス」(・人・)
しかしその後も、相談事を抱えており
あいまいな笑顔で、「ですよねー」と逃げるしかできなかった。
クリスマス?
記号化して、なんの意味をも持たないようにさせていた5文字が蘇った。
そう、クリスマスとは、とびきり魅力的な自分にリボンをかけて
愛する恋人に一晩中愛でてもらう日という意味だったのだ。
サンタクロースも、
クリスマスツリーも、
ブッシュドノエルも、
地味すぎるのに浸透してきたシュト―レンも
隠語にしかすぎなかったのだ。
しかも、
私にその真実を突きつけたのは、私の汚いところばかり見せてきた
古くからの付き合いの女医だったのだ。
いつからしてないだろうね。クリスマスイブデート。
したことないわけじゃないから、昔の自分が蘇る。
羨ましいような、悲しいような気持になる。
この年になって
「クリスマスまでに恋人作る」とか
もうちょっと言えなくなってきてるしな。
そういうインスタントな関係とかよくないよ、とかじゃなく
できない自分が見えるから。
もしできても
「今まで作れなかった恋人が期限持てば即刻出来ただと!なにをぬかすか!」
烈火のごとく怒り狂う「寂しさの化身」の過去の自分が見える。
過去の自分に呪われてるのか?
じっと手を見る。
じっと手を見る。
そういえば
「美意識は爪に出る」と聞いたことがある。
私の短い爪、何かを思って塗ったはずの真っ赤なネイルは、
ぼろぼろで艶を失い、ところどころ剥げおち
まるで傷だらけの心が肉が裂け、血がにじみ出たかのようだ。
「あらやだ、出血してるじゃない。
もうすぐクリスマスなのにどうするのよ!」
悪意のない先生の声が、遠くで繰り返していた。
こじらせ交換日記
こじらせた数人の女子が、どこにもかけない話をかく交換日記。
いわゆるオムニバス形式でお送りします。