ご家族がいる方のお誘いはお断りしております。
まずもって、私ができるオヤジにばかりモテるのには、明確な理由があります。
それは、私ができるオヤジが大好き、ということ。
たいていの場合、はじめから「男として好き」ということはなく、
ちょっと近寄りがたいぐらいの尊敬だったり畏怖の気持ちから始まります。
つまり、仕事の場面で出会うわけですね。
そういう中で先方は、私に協力的だったり、
何か具体的にメリットのある知識や情報や人脈を与えてくれたり、
もちろん美味しいお店でごちそうしてくれたりするわけです。
そうすると、本当に心の底から楽しくなっちゃうんですね。
まあ、そりゃそうですよね。夜景がキレイだったり、会員制だったりするようなお店で、
支払いの心配をせずにシャンパンだのワインだのしゃぶしゃぶだのを
いただきながら、わたしが経験したことのない世界の話を、惜しみなく、浴びせるように、聞かせてくれるわけですから。
「おいしい」と「おもしろい」を交互に味わっているうちに、
すっかりいい気分になります。
そんな私は、どうやら彼らの目から見て「まな板の上の恋」、、、じゃなくて「鯉」。
らしいんです、どうやら。
ちなみに、これまでに私を鯉だと思ったであろう男性の共通点を申しますと、
・推定年収2000万円以上
・「長」がつくお仕事、もしくは独立をされている方
・イケメンではない
・ひとまわり以上、年上
・妻子あり
・直接の上司や取引先など近い関係ではない
の6つ。ざっくりまとめると、「もうでき上がっている人」です。
だから、彼らにとってはもう、限りなく透明に近いほど純粋な遊びです。
そして、リスクはゼロ。
だって、私は彼らの部下でもないし、いつでも縁を切れる存在なわけで。
言うなれば「旅先で出会った相手との一夜の情事」みたいなものなんですね。
要するに、「行きずり」です。
が、しかし。
私が不思議なのは、彼らが意外にも「後が丁寧」ということなんです。
ちなみに、私は彼らの誰とも寝ていません。
一番ギリギリで言うと、身ぐるみはがされて指までつっこまれたけど、
最終的な一線を越えるにはいたらなかった、ということが1度だけありましたが。
それ以外は、ホテルの部屋に来いと言われて行かなかったり。
あまりの強引さと偉さにたじろいで、
ホテルの部屋の入り口まで行き、ドアを開けて敷居の上に片足を置きながら、
ドアを断固として開けたまま堅持しつつ「市長、ここは大人になって」と説得を試みたものの、市長があまりにダダをこねるので、最後は説得を諦めてドアを閉め、
茫然と立ちすくむ市長(想像)を部屋に置き去りにしてきびすを返して帰ったり。
ラブホ街の路上で「なんか今、ひょっとしてラブホ街に連れ込まれてます?わたし?」とお伺いを立てた上で丁重にお断りしたり。
と、彼らにしてみれば「寸止め」。
私にしてみればいきなり襲うモードになられてびっくりして断っただけ、という。
だって、都会ってどこも飲み屋もホテルも近接してるじゃないですか。
二軒目行くのかと思いきやってやつです。
いずれにしても、私はご家族がいる方のお誘いはお断りしております。
もうね、そういう札をおでこに貼っておきたいぐらいです。
私はただただ、おもしろくておいしい時間を過ごしたいだけなんです。
え?虫がいい?
おごらせといてやらせないなんて?
いえいえ。その方たち、お財布も心も、そんなに狭くはないはずなんですよ。
だいたい、お店だって向こうが指定してきてるわけですからね。
男の見栄で、自分のステイタスを披露するためにわざわざ高い店選んできてるわけですよ。
はなからその先を期待して。
こちらからしたら、逆に警戒するっつーの、っていうお話ですよ。
赤提灯でいいのになー、と。
でね。
さすがにこんな話で顔は出せませんが、
私という女は、べつにそんなにきれいじゃないんです。
というか、いわゆる都会でびしっとキメてハイヒールのかかとをコツコツさせて、
休日は女友達とおしゃれなカフェで過ごしたり、ハイブランドのホテルとかを
使いこなしてる、いかにも不倫してそうなタイプじゃ全然ないんですよ。
だから、けっこう「そんなことしたら向こうがカンチガイするよ」っていう
2人で飲みにいくお誘いをする、とか、そういうことをしちゃうんですよ。無自覚に。
で、「あ。意外とわたしって女だったの?」みたいなことに、
襲われて初めてきづくんですよ。
「あ。意外とわたしって女だったの?」ていうのと、
「え。この偉い人、そんなに野獣だったの?」ていうのと。
両方に対してびっくりするわけです。
そこで先方は
「男は全員アホ」というセリフを印籠のように高々と掲げて、
あっさり開き直るわけですけれどもね。
でもクセになるのは、
彼らの「もーこいつかわいいぞ!」っていう目ですよね。
野獣とはいっても、人間ですからね。
それも、知性が高い方の。
あとは、エレベーターとか路上とかでいきなり唇を奪う、みたいな強引さ。とか、
さくっと頭をなでなでする、みたいな余裕。とか。
唯一信じたいのは、「誰でもいいわけじゃない」ということ。
私よりも多くの女性を見て来ている中で、
せめて選ばれたと思いたい、という心理があるんですよね。
話がずれましたが、後が丁寧、のお話。
タクシー代といって10,000円札を握らされてへとへとになって帰った翌日、
メールソフトを開くとそこには長文のメールが。ということがありました。
そこには、
「女性としても人間としても大好きで困る」といったきれいな心情と
「自分勝手な男でごめん。でも、昨日はやれるとこまでやって自分的には最高!」といったバカでアホなケダモノの心情のすべてがあますところなく吐露されておりました。
当時28歳だったわたしは、前日の嫌悪感から見るのもいやという感じで
もうそのままメールを無視して縁を切る以外の選択肢はあり得ませんでした。
だけど、6年経って読み返してみると、
こんなのもらっちゃったら、女のロマンだよなあって。
いったいどこの女のロマンだって、昭和のスナック界隈の女の、ですよね。これって。
ま、でもわたしにそういう気質があるのは事実です、はい。潔く認めます。
でね、きっと、それが、にじみ出ちゃってるんだろうなあ。これも認めます。
友人にも、「そりゃ誘われるでしょ。だって○○、いけそうだもん」って言われます。
そうなんだろうと思います。
そうなんだろう、と。
既婚者ごときがあたしに手出すなんて100年はやい(遅い?)のよ、
っていう毅然とした態度をおそらくみじんも感じさせられない
情けない我が身を、我が運命をのろいつつ、なんと今、
6年ぶりにこのメールに返信をしてみようかとさえ思っております。
一体何がそうさせるのかって、それはもう、好奇心ですよね。
人生に、刺激を求めているわけです。